私はこの涙を止める方法なんて知らない。
ただ、泣く事しか出来なくて。
離れたくない。
あなたが愛しくて、愛しくてたまらない。
痕跡 第10話【秘密】
その後、私たちは和の家に行って、狂ったようにお互いを求めた。
抱き合って、キスをして、そして1つになった。
タイムリミットはあと5時間。
私たちは布団の中で抱き合ったままたくさんのことを話した。
今までの事。
これからの事。
(これからなんてホントは無いのにね。)
「このまま時間なんて止まっちゃえばいいのに。」
心からそう思った。
「そうですね。」
2人で話している間、たくさんのキスをした。
話をして、目が合って、唇を合わせて、また目が合って、そして笑いあった。
「和、私、和に秘密があるの。」
「え?」
「朝まで秘密にしてていいかなぁ・・・?」
「・・・今日の、なんか変ですよ?」
「・・・そうかな?」
「顔は笑ってても心の中でずっと泣いてたでしょ?」
「・・・そうかもしれない。」
「どうしたんですか?その秘密のせい?」
「・・・うん。ねぇ、折角なんだから楽しい話しようよ。」
「・・・そうですね。」
私は笑ってそう言うと、和も笑って答えてくれた。
お互いに作り笑いだって気付いてる。
でも、それから私たちは楽しい話をして笑いあった。
このとき私が笑ったのは作り笑いなんかじゃないよ。
本当に心から笑ったの。
朝まで私たちの話は尽きる事が無かった。
和の優しい腕に抱かれて、和の心地よい声を聞いて、和の幸せそうな笑顔を見て、私は最高の幸せ者になれた。
どうせ終わってしまう人生なら、ここで途切れてしまえばいいのに。
そう思わせるほど。
「私、今最高に幸せ。」
「俺も。」
時計を見ると長針と短針は直線になり、6時を表していた。
あと2時間半。
ここから病院まで30分。
最後の時は確実に近づいている。
「そうだ、私朝ごはん作るね。」
「まじ?やった!!」
「台所借りるね。」
私が朝ごはんを作っている間、和はソファーに座って此方をじっと見ていた。
きっと和の事だから、私の“秘密”を気にしているのだろう。
「どうしたの?私の顔に何かついてる?」
「いえ、なにも。」
「そう?」
「強いて言うなら、目と鼻と口がついてますよ。」
「ふふふ。はいはい。」
簡単に卵とベーコンとトースト、サラダを机に並べて、2人で向かい合って座った。
「いただきまーす。」
「おいしい?」
「うん。うまい。」
私たちは朝食をとりながら、楽しい会話に花を咲かせた。
でも、時間は残酷にも刻一刻と迫ってくる。
「そろそろ病院行く準備しなくちゃ。」
「もうそんな時間?」
「あっという間だね。1日って。」
「楽しい時間ってのはあっという間に過ぎるもんなんですよ。」
私たちは病院に行くために準備を始めた。
シャワーに入って、着替えて、ちょっぴり化粧もして。
和がシャワーに入っている間、私は用意しておいた便箋と封筒をいくつか取り出して、急いでボールペンを走らせた。
そして最後にピンクのハートのシールで便箋に蓋をした。
「じゃぁそろそろ行きますか。」
「うん。」
時刻は7時52分。
私たちは昨日のように手を取り合って歩き出した。
もうこうやって手を握って歩けるのも最後なんだね。
さようなら、私の愛しい日々。
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超久しぶりですいません。
もうすぐ完結!!
wrote : 2006.9.23
UP : 2006.10.28