俺の見える全ての世界が色を失い、白と黒だけのモノクロの世界へと変わった。






































































 痕跡 最終話【愛の証】


































































それから、通夜、葬式が淡々と行われていった。

黒い服を着た業者の人たちが慣れた手つきで準備をし、そして片付けるのをただただ眺めているだけだった。


葬式ではたくさんの人が涙を流しの死を悔やんでいて、が多くの人に愛されていたということを改めて感じた。
でも、俺の目からは何も流れてこなかった。



俺は多分の死を受け入れてないんだ。



だって、の家に行けばいつもみたいに笑顔でが出てくるんじゃないかって。
俺の家に帰ればいつもみたいに優しい声で“おかえり”って言ってくれるんじゃないかって。

コレはきっと夢なんだ。
が倒れたところから全部が夢で、本当の俺は今頃と気持ちよく寝ているんだって。

心のどこかで思っている。









コレが夢なら誰か、誰か早く起こしてよ。


この悪夢から―――
















































*****



































「和也君、」


黒尽くめの業者も仕事を終え、みんなが帰った頃、俺はおばさんに呼び止められた。


「これ、の鞄の中に入ってたの。」


そう言っておばさんが取り出したのは1通の手紙だった。


「手紙・・・?」

その手紙にはの字で“和へ”と書かれていた。














俺は手紙を大事にポケットにしまい、あの海へと向かった。

との思い出のあの場所へ。













































***






































俺はと最後のデートで歩いたときと同じ道を辿る様に歩き、近くにあった大きな石の上に座った。


太陽はまぶしいくらいに照っていて、この前まで降り続いていた雨が嘘のようだった。




俺はポケットからあの手紙を取り出し、もう一度宛名の部分を見た。
そして、ゆっくりと中身を取り出した。






なんだか胸がドキドキした。

































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 和へ                          


 きっと和がこれを読む頃には私はもうこの世にはいません。 
 最後のときに、和に大事なことが伝えられなかったら嫌なの 
 で手紙を書くことにしました。
 
 和と出会って、私は初めて本当に人を愛するってことがわか 
 ったんだよ。
 和が私に「好き」って言ってくれた時、すっごく嬉しくて、 
 嬉しくて、涙が止まんなくて、和が笑って抱きしめてくて、 
 本当に幸せでした。
 初めて行ったデートで海に行ったよね?
 私はあの場所が大好きで、和の知らない間に何回も1人で  
 行きました。
 和が仕事で忙しくて、会いたくても会えないときは、必ず  
 あそこに行って和の事思い出すの。
 そしたら、自然と寂しくなくなるんだよね。
 最後のデートでも行けてよかった。
 ちょっと泣いちゃったけど、あそこは思い出の場所だから。 
 私と和の。

 私はね、死んだらあの海の上で輝く星になります。
 そこで和の事ずっと見てるから。
 
 もう会えないけど、これだけは忘れないで。
 私は本当に、本当にあなたのことが好きでした。
 愛してました。
 ずっと、ずっと一緒に居たかった。
 一緒に幸せに暮らしたかった。
 
 和、私の分まで幸せになってね。
 早く私の代わりを見つけて、たくさん笑って生きて下さい。 
 
 ありがとう。
 さようなら。


                            より                       

―――――――――――――――――――――――――――――







































手紙を読み終えると、俺の目からは涙が一筋、二筋と流れていった。


やっと解ったんだ。

これが“死”なんだ。
の“死”なんだ。




俺の涙はどんどん溢れ、止まろうとはしなかった。

はもうこの世にはいない。
もう会えない。
あの声も、あの笑顔も、残っているのは俺の記憶の中だけ。



でも、は俺を見ていてくれますよね?
今は太陽で見えないけど、夜になれば空で一番輝いていますよね?
いつまでもずっと、ずっと。







俺はの最後の言葉にまだ答えていなかった。
まだに伝えていない言葉。

その言葉を空に向かって呟いた。
に聞こえるように。






空は爽やかな青色だった。







「俺も、ずっとずっとの事愛してる。」

























俺の頬に跡を残して流れていった涙。

きっとこの涙の跡は永遠に消える事はないだろう。

そして、この涙の跡こそが俺とが愛し合った何よりの“証”
































































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長い間お付き合いありがとうございました!!
『痕跡』完結です!!



wrote : 2007.3.11
UP : 2007.3.11