俺はこれは夢なんだと信じたかった。
でも、そう信じたところで現実が変わることはない。

今を受け止めるしかなかった。



雨はまだ降り続いている。






























 痕跡 第3話【夢の世界】






































が倒れてから数日。
俺は目を覚ますことのないの元へ毎日通い続けた。

仕事が始まるギリギリの時間まで病室を離れず、仕事が終わったらメンバーの誘いも断ってに会いに来た。
睡眠時間も以前の半分くらいに減った。


の目が覚めたとき、傍にいたいから・・・










そんな日々も3週間目になった。
今年は雨が多くて、3週間の間に雨がやんだのはほんの数日だった。

今日も雨がシトシトと降っている。




そんな中、俺とおばさんは医者に呼ばれた。



医者は咳払いをひとつし、ゆくっりと



“そろそろ覚悟を決めてください”



そう告げた。








覚悟?
そんなもん決めれるわけないだろ。


俺は諦めれない。

――――諦めたくない。













その夜、俺は静かに眠るの手を握り締めた。




「頼むから目ぇ覚ましてくれよ・・・」




目から垂れ落ちた雫は真っ白なシーツに染み込んでいった。















3週間の疲れも出たのか、俺はそのまま久しぶりの深い眠りについた。
のベットに寄りかかり、手はしっかりと握り締めたまま。

その手は暖かかった。



































これは夢?






周りは真っ白で端が見えない。
俺の少し先にはがベットで眠っていた。



・・・?」



俺はに近づこうと足を前へ出したがその距離はまったく縮まらなかった。

その時、どこからか男の低い声がした。



“彼女は明日までの命。”


「え?」




その声の主の姿はどこにも見えない。



“彼女を助けたいか?”



再びなぞの声がした。

彼女とはきっとのことだ。
助けたいかって?
そんなの決まってる。


「助けたい。」





なぞの声は答えた。


“大切なものを失っても助けたいか?”


大切なもの?
俺の大切なものは
お金も名誉もいらない。
が傍で笑ってくれていれば、俺は生きて行ける。


より大切なものはないんです。だから・・・」



助けてください。






そう言った瞬間、真っ白な世界は消えて俺は闇に放り込まれた。






































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wrote : 2006.5.7
UP : 2006.7.2