目を覚ました瞬間からそんな冗談を飛ばすような人でしたっけ?
あなたは。


俺はに近寄ることも、遠ざかることもできなくなった。



































 痕跡 第5話【記憶】













































?和也君じゃない!!あなたの彼氏の!!」



俺の代わりにおばさんが必死になって言ってくれた。



「和也君・・・?お母さん、私、彼氏なんていないよ?」



は平然とそう言った。

おかしいな。
もしかして、これも夢の一部?
本物のはまだ・・・・?



「何言ってるの!!和也君はね、どんなに仕事が忙しくても、毎日毎日看病に来てくれてたのよ?!」
「おばさん!!」
「・・・和也君?」
「いいんです。俺は大丈夫ですから。きっと目ぇ覚めたばっかりだから頭が混乱してるんですよ。」



俺は自分に言い聞かせるようにそう言った。
本当は大丈夫な訳ない。
多分、一番頭が混乱しているのは俺だ。
冷静を装ってとおばさんのやり取りを見守った。







その直後、お医者さんがやって来てを診察し、簡単な説明を始めた。
それを聞くと、は一部的に記憶喪失になっているらしい。
極稀にある症状で、治るのは5分後かもしれないし、一生治らないかもしれないとの事だ。




俺は、再びアノ夢のことを思い出した。



――――大切なものを失っても助けたいか?



大切なもの?
そうか。
直接俺の大切なものが奪われたわけじゃなかったんだ。
俺はを使って間接的に大切なものを奪われた。


そう気付くと、涙がゆっくりと頬を伝っていった。


あの声の主はの俺との記憶を全て消し去って行った。




“私、彼氏なんていないよ?”

それはの笑えない冗談ではなく、紛れもない本気の言葉。

















気付いたときには、もう月が出ていて、満月の光は俺をしっとりと濡らした。











































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もう夏休みです。
今年は梅雨が長いですねぇ〜



wrote : 2006.6.11
UP : 2006.7.24