飛べ
飛べ
青空を切って
風に乗って
この思いを乗せて
あなたの元へ――
愛の紙ヒコーキ
ミーン。
ミーン。
ミーン。
「もー!!!マジうるさい!!!」
私、は高校3年生という職について5ヶ月目をむかえようとしている、れっきとした受験生。
でも、勉強をやる気なんて微塵も沸いてこない。
きっとこれは夏の暑さと、蝉のうるささと、1ヶ月ほど会っていない隣に住んでいるの幼馴染のせいだ。
私の幼馴染の松本潤は今を輝くスーパーアイドル嵐のメンバーで、この時期はコンサートとかでほとんど家に帰ってこない。
「いいよねぇ〜。もう仕事のある人は高卒でも余裕で。」
はぁっとため息交じりに嫌味を言ってやっても所詮は独り言。
潤には届かない。
開いた窓から見える潤の部屋の窓はずっと閉まっている。
念力で開けようとしたけど、私にはそんな特別な力はないから開くわけがなかった。
「あんなヤツほっといて勉強勉強!!!」
机に向かってノートを開いた。
でもやっぱりやる気は沸かない。
「関数ってなんですか!!Xってなんですか!!ってか数学って何!?」
もうすぐ夏休みは終わりをむかえるのにノートもワークも真っ白。
いっその事、頭の中も真っ白になれば楽なのに・・・
(受験生としてそれはまずいか。)
会いたい。
会いたい。
潤に会いたい。
どーせ潤は私の事なんか忘れて、仕事を一生懸命してるんだろう。
(まぁ別に潤の彼女って訳じゃないから忘れてて当たり前か。)
“スキ”って言えたらどんなに楽か。
でも今のこの関係を崩したくない。
フラレて気まずくなるよりは、幼馴染でも良いから潤のそばにいたい。
でも、それもそろそろ限界みたい。
“スキ”って気持ちが溢れ出す。
(これが勉強やる気だったらいいのに・・・)
「スキ・・・かぁ。」
はぁーっと本日2回目のため息をして、手元を見ると無意識にノートには“スキ”の2文字が。
「これは重症だよ。」
私は思わず苦笑してそのページを破った。
そして、昔を思い出して“スキ”と書かれたノートのページを1回、2回と折っていった。
出来上がったのは“紙ヒコーキ”。
中には“スキ”の2文字。
それを窓際まで持って行き、えいっと青空に向かって投げた。
「バイバイ。紙ヒコーキ。」
バイバイ。
潤へのこの気持ち。
紙ヒコーキはゆっくりと風に乗り、太陽に照らされ、潤の家のほうに飛んでいった。
“ガラッ”
「いてっ!!」
「あっ。」
1ヶ月間、一度も開かなかった窓が開けられ、潤のオデコに紙ヒコーキがクリティカルヒット。
「お前、何やってんだよ。」
潤は眉間にしわを寄せてこちらをギロッと睨んできた。
「えへへ。久しぶり。」
ヒラヒラと手を振ってみたけれど、潤の手には紙ヒコーキが握られている。
“スキ”っと書かれた、あの紙ヒコーキが。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイっ!!!)
「紙ヒコーキ飛ばすとか・・・お前何歳なんだよ。」
オデコを擦りながら笑う潤は思ったより怒ってないみたい。
「じゅ、じゅうはちだよっ!!!」
「いや、普通に答えんなよ。しかも平仮名だし。何テンパってんの?」
潤は紙ヒコーキをしかっりと握り締めたまま。
「何にもない・・・。」
「ふ〜ん。ってかコレ、ノート?」
「あ!!ダメッ!!」
急いで止めようとしたけど、そんなに複雑に折られていない紙ヒコーキは元のノートに戻ってしまった。
念力で“スキ”の文字を消そうと思ったけど、やっぱり無理だった。
(あぁ、なんで私はエスパーに生まれてこなかったの??)
潤の目の前にはあの2文字が並んでいる。
「コレって・・・俺に?」
潤はどうとも取れる表情でこっちを見た。
でも、私の気持ちがバレているのは確実。
潤は勘がいいから。
もうこうなったらコレしかない。
私は涙目で潤に叫んだ。
「そーだよ!!アンタにだよッ!!」
「・・・」
逆切れ。
(最低だ、私・・・)
潤も無言で部屋の奥に入ってしまった。
「あ゛〜最悪だぁ〜・・・。」
小さく呟いて私も窓際から離れ、ベットにダイブした。
終わった。
私の恋。
(これからどんな顔して潤に会えばいいの・・・?)
“パサッ”
「・・・ん?」
窓から紙ヒコーキが風とともに入ってきた。
私はベットから起き上がると、紙ヒコーキに近づいた。
私の紙ヒコーキ・・・じゃない。
折り方が違う。
(私の折り方は小さい頃に研究して発見した、一番飛ぶ折り方。)
その紙ヒコーキを開いてみると、そこには見慣れたあの人の字で書かれた2文字が。
“俺も”
私は窓の外を見た。
「潤!!!」
潤は窓枠にもたれかかり、満面の笑みでこっちを見ていた。
「、そっち行っていい?」
「う、うん。」
まさか、こんなことになるなんて思っていなかった私の頭は大パニック。
それはもう、覚えた公式もどっかに飛んでいったんじゃないかと思うくらい。
(あぁ、折角覚えたのに・・・)
「すぐ行くから。」
潤はそう言って、窓も開けたまま部屋の奥に消えていった。
紙ヒコーキを飛ばしたのが、これから始まる甘い甘い時間のスタート合図。
暑さと甘さでトロトロに溶けてしまうのは確実。
(数学の問題は解けないのにね。)
飛べ
飛べ
青空を切って
風に乗って
この思いを乗せて
あなたの元へ――
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去年の冬に書いた話です。
受験生頑張れっ!!!
wrote : 2005.12.19
UP : 2006.8.29