約束の日から19日目の朝、俺はある不安を抱えながら登校(すでに遅刻)していた。
(どうしよう・・・きっと翔君・・・昨日・・・)
俺は昨日思ったよりスケッチに時間がかかり、帰るのがいつもより遅くなってしまった。
一通り片づけが終わっていつものように1人で(美術部で真面目に来てるの俺だけだし)いつもの道を歩いていると、翔君がサッカー部のマネジャーの子と手を繋いで帰っていた。
(見ちゃった・・・)
そんなわけで俺は足取りが重くて遅刻しながら学校へ向かっている。
(決して寝坊した訳では・・・)
俺はそのままの足取りで教室に入った。
授業中の割にはうるさいなと思ったら、黒板には大きく“自習”と書いてあった。
恐る恐るいつもの4人のほうを見ると、ニノはゲームに夢中で、松潤と翔君はなにやら楽しそうに話している。
いつもと変わんないな、と思って相葉ちゃんを見ると、意味不明な奇声を発して俺に飛びついてきた。
「ど、どうしたの相葉ちゃん!?」
「しょ、しょうくんがぁぁああ〜」
その声で俺がやっと登校したのに気がついた翔君はまるで周りにキラキラの青春オーラをまとっているような爽やかな笑顔でこっちにやってきた。
「おはよう。」
「お、おはよ。」
「俺、彼女できたから。」
(やっぱりか・・・)
それだけ言うと翔君は怪しげな笑みを浮かべ、松潤のほうへ満足そうに帰っていった。
「ヘタレのくせに・・・」
相葉ちゃんは翔君に睨まれて、あっかんベーをした。
その日3人で食べたお弁当はちょっぴり寂しい味がした。
(気のせいかな・・・?)
ピンクのスケッチブック
それから3人の昼休みは6日間続いた。
俺はその日、学校のすぐ後ろにある小さな丘へいつものようにスケッチに出かけた。
そこは学校から5分もかからない場所で、景色が最高で、あまり誰にも知られていない超穴場。
(昼寝にもぴったり!!)
一目でここが気に入った俺は、ほぼ毎日のようにここに来てスケッチをしている。
でも俺がここを気に入った理由はもうひとつ。
「智君。」
「あ、ちゃん。」
今日もスケッチをしていると、俺たちの学校とは少し形も色も違う制服を着た女の子が後ろから現れた。
栗色の長い髪の毛をふわりと少し巻いて、膝上のスカートをヒラヒラさせながら楽しそうに駆け寄ってくる。
その手には俺と同じようにスケッチブックと、たくさんの鉛筆が入った大きな筆箱。
「今日は何描いてるの?」
「あれ。」
俺はいつもの屋上を指差した。
「学校?」
「うん。俺、友達といっつもあそこでお弁当食べたり喋ったりしてんの。」
「ふーん。あ、じゃぁ私も学校描こっ!!」
ちゃんは俺の後ろに背を向けるように座った。
お互いの背中が触れるか触れないか、そんな距離。
俺としてはいつもの様に横にいて欲しかったりするんだけど、そんな事言えるはずもなくて、そのままスケッチを再開した。
俺は半年前、初めてここにスケッチにやってきた。
いつもは美術室で人物画とかを描いていたのだけど、先生がコンクールに出すからといって強制的に風景画を描くことになった。
どこか良い所はないかとフラフラ歩いていた時にたまたまここを発見した。
俺は腰を降ろし、スケッチに集中した。
どれくらい経った後か、スケッチブックを抱えた彼女はひょっこりと俺の前に現れた。
その時はお互い誰もいないことを前提にしていたので、2人で飛び上がるくらいビックリしたのを覚えている。
それから俺たちはスケッチをしながら少しづつお互いの事を知った。
彼女の名前は。
ずっと女子校育ちで、今も丘の向こうの女子高に通っている。
俺と同じ美術部で風景画が好きらしい。
学校から5分ほどで来れるこの丘でスケッチするのが特にお気に入りだとか。
(この丘は俺たちの学校とちゃんの学校のちょうど真ん中にあるみたい。)
「えい!!」
「うおっ!?」
ぼんやりとスケッチをしていると、さっきまで静かに鉛筆を走らせていたちゃんが急に俺の背中に勢い良く寄りかかってきた。
「智君どうしたの?ぼーっとしちゃって。」
「べ、別に何もないよ。」
「何もないことないでしょ?手が止まってるよ?」
ちゃんがあははっと笑うと、背中からその振動が伝わってきて、俺の心臓はドキドキといつもより早いペースで動いた。
その心臓のドキドキがちゃんにも伝わっちゃうんじゃないかと思うと、余計にドキドキ。
(悪循環だ・・・。)
「ねぇ、智君って人物画得意なんだよね?」
「まぁ好きだけど・・・?」
「私描いてよ。」
「えっ!?」
「鉛筆で簡単にでいいからさ。」
「・・・」
俺はゆっくりと立ち上がり、ちゃんの前に座った。
スケッチブックを1枚捲り、真っ白なページに真っ黒な線を描いていく。
ちゃんの大きな瞳、長い睫毛、ちょっと丸い鼻、ふっくらした唇。
1つ1つをじっくり見るのはなんだか恥ずかしくて、変な気持ちになった。
「・・・」
「・・・」
「・・・ちゃん、」
「なに?」
「俺の事あんまりまじまじと見ないでくれる?」
「智君だって私のことまじまじと見てるじゃん。」
「だって見ないと描けないよ?」
「じゃぁ私も見る。」
「いや、理由になってないんだけど。」
「気にしない気にしない。」
俺は無理やり納得させられて再び鉛筆を動かした。
「ちゃん、色鉛筆借りるね。」
「どーぞ。」
鉛筆で一通り書き終えた俺は、ちゃんの大きな筆箱からピンクの色鉛筆を探し出した。
そして、右端に心を込めて仕上げをした。
(俺の気持ちが伝わりますように。)
「できたよ。」
「見せて見せて!!」
ちゃんは嬉しそうに俺に近づいてきた。
俺は右端を少しだけ折り、ちゃんにスケッチブックを渡した。
「わぁー智君うまいね。」
俺の絵を見て、ちゃんは嬉しそうに笑った。
そして右端の折り目を極自然に戻した。
「えっ?」
「俺の気持ち。」
ちゃんはそのままの形で固まってしまった。
(やっぱり女子校育ちだからこういう事って慣れてないのかな・・・?)
どうしようかなんて意外と冷静なことを思いながら、頭をボリボリ掻くと、ちゃんが動き出して、筆箱から俺が使ったのと同じピンクの色鉛筆を取り出した。
俺がそのまま見ていると、ちゃんは俺のスケッチブックの左端に何か書き、俺と同じようにそこを折って俺にスケッチブックを差し出した。
恐る恐るそれを受け取ると、左端に目を落とした。
そこは綺麗に折られている。
俺は出来るだけ落ち着こうと、深呼吸を1回し、その折り目を広げた。
中の小さな可愛らしい文字を見た瞬間、俺の体は勝手にちゃんに手を伸ばしていた。
「きゃっ!」
「よかったぁぁぁあ〜!!」
俺はちゃんを腕の中にしっかりと抱え込んで、言葉とともに緊張を吐き出した。
「さ、智君、」
「智って呼んで。」
「・・・智、」
「何?。」
嬉しすぎて思わず強気になった俺の要求を、がすんなりと受け入れてくれて、もう俺の口角は上がりっぱなし。
(あぁ、俺今最高に幸せだ。)
「・・・好きだよ。」
「俺も大好き。」
背中にの手がまわってきて、俺もより一層強く抱きしめた。
誰もいない丘の上。
周りに見える青い空も、白い雲も、小さな花たちも、綺麗な街並みも、全部を自分のモノにした気分。
そして、やっと捕まえた、
“すき”
“私も”
俺の大切な大切な愛しい人。
さぁ、明日からは新しいハッピースクールライフ。
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5000HIT 記念小説第3弾!!!
遅くなってすいません;
後半は強気な大野さんです(笑
wrote : 2006.12.24
UP : 2006.12.24